A男は、私とU子がT子の事を呼ぶ時に
自分が聞いてる名前とは
違う呼び名だった事が気になっていたと。
話しを進めるうちに
年齢も10歳以上若くサバを
読んでいたらしい。
仕事も秘書をしていると聞いていると。
自分の子供も、
知り合いの子を預かっていると。
T子はとてもふくよかな体型だ。
ネットでのやり取りが続いている時には
自分の娘の細身の洋服を【自分の物】と偽って
写真を送っていたらしい。
全部嘘。大嘘。
U子も私もただただ驚く事しかできなかった。
人生で一番驚いたといっても大袈裟ではないくらい。
将来を約束し子供達のことも考えていると
聞いた事を伝えるとA男はあきれていた。
｢自分の子供の方が大事｣と言い放った。
A男はT子に煽られて家を出て現在別居中。
それもネットでやり取りするうちに…
A男とT子は実際に会う前に
別居をしたと言う。
A男の中では
自分よりひとまわり以上若くて
秘書と言う職業に就く
細身の女性だと確信を
持っていたからこその行動だったと。
しかしいざ会ってみたら…
年齢も体型も大きく違う女性が現れた。
そして涙を流しながら
｢病気の薬の副作用で倍以上に太ってしまい…
仕事も辞めてきた｣と。
そしていつまでも帰らない。
2週間居座り続けた事もあったと。
(私はもちろんこの2週間というのは
U子も初耳だったらしい)
今回も帰らないしA男が仕事に行く事すら
許さないと言う暴挙に出たと…。
唖然とする。
え？誰の話しなの？夢みたいにも思える。
T子。こんなに？
こんなに信じられない嘘をつく人だったんだ？
この世のなかにこんな人いるんだ。
しかもこんな身近に…。
一体私は、T子の何を見ていたんだろう…。
そう思ったのはU子も一緒だったようで
二人とも悲しく自然に涙がこぼれ落ちた。
しばらくするとT子の母親も
警察に呼ばれたようでやってきた。
T子のお母さんは
A男を軽く睨み付けた後
U子と私に
｢ごめんね。なんだか迷惑かけてるみたいだね｣
と言った。
私とU子は一番の心配事項である
病気の事を聞いた。
きっと病気だから…傷ついてしまい
訳もわからずパニくって
こんな大嘘をついてしまっているのかも…。
｢ついこないだ、一緒に健康診断に行って
結果ももらったけどそんな事実は無いよ…。｣
T子のお母さんは静かに答えた。
病気も嘘だった…。
A男は聞きもしないのに色々教えてくれた。
私やU子とのエピソードで
T子は文句を言ったりしていたと。
それも口汚い言葉で…。
そんな風に思っていたんだ…。
心と言う臓器があったなら
そこを長い爪で思い切りザクッと
えぐられた気分だ。
こんなことあるんだ…。
話を終えて、皆で警察署を後にする。
T子は違う場所へ連れていくと
刑事さんが話してくれた。
憔悴しきって家に帰る。
もう深夜だった。
長い長い1日だった。
この日の事は一生忘れられない。
ちょうど今くらいの季節の事だった。
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